今年の夏はジリジリするような陽射しの強さ、体温以上になるような気温の上昇と暑さ、また、蒸し暑さなどから体調を崩す方、夏バテを訴える方が多かったようでした。
汗を大量にかく暑さと湿気の多さの中で大切なことの一つは、塩分の補給だと思います。あらゆる生物にとって「塩」は命の源と言われるくらい体内で大切な生理的作用をしています。ですので、汗をかいた後、水分だけの補給では塩分もミネラルも不足し、バランスを崩します。熱中症、体がだるい、体が重い、疲れやすい、食欲の減退など、夏バテの症状には塩不足があるのではないかと思います。そして塩分をいかに上手に摂るかを考えていました。
そんな暑くなりかけた5、6月頃、梅干しを食べたらあまりに美味しくて2−3粒ペロリと食べてしまいました。(あ〜こんなに体が塩分を必要としていたのか)と感じ、毎日2、3、4粒と体調に合わせ摂取したところ、夏バテもせず、体も心も快調でした。去年の夏と体が違う事を実感したのです。そこでこれはもちろん梅干しの塩分もですが、塩分だけではなく梅干しそのものにも秘密があったのではないかと気づきました。
では、体に良いと昔から言われてきた梅干しに実際はどんな栄養が含まれているのか、それらがどんな働きをしているのか、調べてみました。
そこで見つけたのが梅干博士と言われている、宇都宮 洋才(ヒロトシ)博士(大阪河﨑リハビリテーション大学 教授)の研究により医学的にも解明されてきている効果でした。
1. アンチエイジング、美容効果
2. 疲労回復
3. 食中毒予防
4. インフルエンザ、胃潰瘍、胃がんの予防
5. 血流改善、血液サラサラ効果、コルステロール減少
6. 生活習慣病、動脈硬化予防
7. 血圧を下げる効果
8. 腸内の動きをスムーズにして、便通を良くする
これらの効果、効能を可能にしているのが、梅干しに詰まっている栄養のおかげです。
・クエン酸、りんご酸、コハク酸、ピルビン酸、ピクリン酸など豊富な有機酸
・梅リブナンと呼ばれるポリフェノール
・タンパク質、ビタミンE、カリウム、リン、鉄分、カルシウムなどのミネラルを含む栄養
『一日一粒で医者要らず』と言い伝えられてきた梅干しに、実はこんな効能があったのかとびっくりしました。
ただ、梅干しの製法が古来のものと随分違ってきています。古来、梅干しは梅の20%の分量の塩で、それも海水を煮詰めて作った自然塩で漬け、天日干しします。
このように作られた梅干しは100年も腐ることもかびることもなく、保存がきき、さらに上記のような効能が生まれたのではないか、そしてそこに昔の人たちの知恵があったのではないかと思われました。昔ながらの酸っぱい梅干しには血圧を下げる効果もあったのです。
最近は、少し涼しい風も吹いてきました。暑い盛りの夏よりもこの少し涼しくなってきた秋口に夏バテが出ます。ほっとした時に、それまで頑張ってきた体が自律神経の乱れや疲労から体調不良を訴えます。こんな時期にも毎日2−3粒の梅干しで元気に乗り切りましょう。
【参考文献】
・『塩が泣いている』真弓定夫医学博士 監修、美健ガイド社、2014年
・『日本人には塩が足りない』村上譲顕 著、東洋経済新聞社、2009年