急に寒さが増し、もう初冬という季節になりました。もう少し前にお伝えすればよかったかもしれませんが、秋から冬にかけての過ごし方の話です。
夏の暑さが少し和らぎ、体がほっとする秋口から、体調を崩す方が増えます。胃腸がヘンだ、食欲が出ない、便秘気味、頭痛やめまいなど。どうもなんとなく不調だ、疲れやすい、どこというわけでもないのだが、自分でもよくわからない…。
毎年耳にするのですが、今年は特に多いように思います。それだけ、今年の暑さが厳しかったといえるのではないかと思います。
東洋医学では、自然現象が過多になったものを「邪気」と呼びますが、夏の暑さは暑邪といいます。この暑邪は胃腸を直撃します。それで胃腸も弱りますが、体力・活力も消耗しますので、疲れも溜まります。それでも体は日常の営みを滞らせずに、体内の恒常性を保つように頑張ります。そして涼しくなった秋口あたりから、体はほっとして夏の疲れを感じさせ始めます。実はこの症状が夏バテなのです。そしてその現象には、自律神経という神経の作用が関わっています。
自律神経には交感神経と副交感神経という二種類があります。そしてこの自律神経は、内臓の活動や汗、体温調節、眠り、免疫など自分の意思ではコントロールできない働きを担当しています。
交感神経は体調を興奮させる神経で、主に昼間の活動時に優勢に働きます。交感神経が優位になると、その末端からアドレナリンという神経伝達物質が分泌され、心臓の拍動を高め、血管を収縮して血圧を上昇させていくことで、体は活動的になります。
一方、副交感神経は主に休息時や食事をする時に優位に働く神経です。血管を拡張させて血流を促し、心身をリラックスした体調に整えます。
これを動物の行動にたとえてみるとわかりやすいです。動物が敵と出会った時、体はどう反応するでしょうか。敵をしっかり見ようと、目は大きくらんらんと輝き、心臓は全身に血液を送ろうとしてバクバク拍動します。呼吸も荒く、酸素をたくさん取り入れ、筋肉はすぐに動けるように力みなぎります。戦うか逃げるか現状を把握し、決定しなければなりませんから、頭脳もフル回転です。そして即、行動します。そしてその間、敵にガブっと噛まれても痛いと感じている暇はありませんし、お腹が空いたとか、排泄したい、疲れたなんて思っている暇もありません。なんせ命がかかっているのですから。これが交感神経優位な時の体の反応です。
その危機、緊張状態が去った後の体の反応はどうでしょうか。噛まれた傷が痛み出し、排泄したかったこと、お腹が空いたこと、疲れを感じ始めます。副交感神経が優位になり、心身をリラックスさせ、排泄や食欲を促し、体調を整えるのです。
夏という敵に対して戦った後の体は、実はとても疲れています。胃腸も調子があまりよくなくて、食欲がなかった方もいらっしゃったでしょう。涼しくなったとはいえ、まだ夏の疲れが残り、体調が万全ではない時です。まず、敵に噛まれた動物が傷を癒すように、ゆったりリラックスして休んだり、食事も少し控えめにして胃腸を休ませてあげたりと、休養を第一に考えていただくと良いかと思います。それが冬の備え、冬を乗りきる元気になり、免疫力も上がります。
スポーツの秋、行楽の秋、食欲の秋ももう少し体調が戻り、内側から元気が湧いてくるのを待ってからにしてみてはいかがですか?こういうことが「体の声を聞く」ことのコツではないかと思っています。